もし、地球の反対側までまっすぐ続く穴があったら……。
その穴にボールを落とすと、どうなるのでしょうか?
「地球の中心で止まる?」「反対側まで飛んでいく?」
実は、空気抵抗がなく、地球が回転せず、内部を安全に通れると仮定すれば、ボールは地球の反対側まで到達します。
しかも、単純化した計算では、わずか約42分です。
なぜそんなことが起こるのか?
その秘密は、地球の内部で働く「重力」にあります。
地球の穴に落ちたらどうなる?|反対側まで行ける!
まず、次のような特別な地球を想像してみましょう。
- 地球の中心を通る、まっすぐな穴がある
- 穴の中は真空で、空気抵抗がない
- 地球の自転や摩擦の影響を考えない
- 地球内部の高温・高圧の問題も無視する
この条件で、地表からボールをそっと落とします。
すると、ボールは次のように動きます。
① 地球の中心に向かって落下する
重力によって引っ張られ、速度が増していきます。
② 地球の中心を通過する
中心では重力の合力がゼロになりますが、ボールは止まりません。
③ 反対側の地表に向かって上昇する
今度は重力によって減速しながら進みます。
④ 反対側の地表で一瞬止まる
最初に落とした地点と同じ高さまで戻り、速度がゼロになります。
ここでボールを受け止めなければ、再び中心に向かって落ち始めます。
つまり、理想的な条件では、地球の両端を行ったり来たりするのです。
地球の中心では重力がゼロ!?|意外な仕組み

「地球の中心は、重力が一番強いんじゃないの?」
そう思うかもしれません。
しかし、地球を球対称な天体と考えると、ちょうど中心では、あらゆる方向からの重力がつり合います。
そのため、中心で働く重力の合力はゼロになります。
ここで重要なのは、地球の内部に入ったときの重力の変化です。
地球全体の密度が一様だと仮定すると、中心に近づくほど重力は弱くなります。
そして、中心でゼロになります。
ただし、現実の地球は中心部ほど密度が高いため、実際の重力の変化はもう少し複雑です。
「中心に近づくほど重力が弱くなる」という説明は、地球の密度を一様とした単純化モデルで成り立つものです。
重力がゼロなのに止まらない!?|慣性の秘密
地球の中心で重力がゼロになるなら、ボールもそこで止まりそうですよね。
しかし、実際には止まりません。
その理由は、慣性(かんせい)です。
慣性とは、物体がそれまでの運動状態を保とうとする性質のことです。
ボールは中心に到達するまで、重力によって加速しています。
そして、中心に着いた瞬間には、すでに大きな速度を持っています。
中心では重力の合力がゼロになっても、その速度が突然ゼロになるわけではありません。
そのため、ボールは中心を通り抜けます。
むしろ、空気抵抗のない理想的なモデルでは、中心を通過する瞬間が最も速くなるのです。
同じ慣性の仕組みは、走っている電車の中でも観察できます。
関連記事「電車でジャンプしても後ろに飛ばされない!?|実は体も動いている驚きの理由」では、動いている電車の中でジャンプしても、なぜ元の位置付近に着地できるのかを解説しています。

反対側まで約42分!?|重力で動く不思議な旅

では、地球の反対側まで到達するのに、どれくらい時間がかかるのでしょうか?
地球の密度がどこでも同じだと仮定すると、答えは約42分です。
これは、地球の半径と地表の重力加速度を使って計算できます。
地球の半径を約6,371km、地表の重力加速度を約9.8m/s²とすると、反対側までの時間は約42.2分になります。
| 地点 | 経過時間の目安 |
|---|---|
| 出発地点 | 0分 |
| 地球の中心 | 約21分 |
| 反対側の地表 | 約42分 |
| 元の出発地点に戻る | 約84分 |
※地球の密度が一様で、空気抵抗や自転の影響がない場合の計算です。
さらに驚くことに、現実の地球の密度分布を考慮した研究では、理想的な真空トンネルを通る時間は約38分と計算されています。
地球内部の密度が一様ではないため、重力の働き方も変わるからです。
つまり、「約42分」は単純化したモデルの答えで、「約38分」は地球内部の密度分布を考慮した計算結果なのです。
反対側で止まるのはなぜ?|エネルギー保存の法則

ここで、もう一つ不思議なことがあります。
なぜボールは、反対側の地表でちょうど止まるのでしょうか?
その理由は、力学的エネルギー保存の法則です。
空気抵抗や摩擦がなければ、位置エネルギーと運動エネルギーの合計は変わりません。
ボールを地表から静かに落とすと、
- 地球の中心に近づく間は、位置エネルギーが運動エネルギーに変わる
- 中心を通過した後は、運動エネルギーが位置エネルギーに戻る
という変化が起こります。
そして、反対側の地表に到達したときには、出発地点と同じ位置エネルギーに戻ります。
そのため、運動エネルギーはゼロになり、ボールは一瞬止まるのです。
落ちるときに得た速さを、反対側へ上がるときに使い切る。
これが、反対側で止まる理由です。
実際に地球を貫通する穴を掘れるの?
残念ながら、現実には非常に難しい問題があります。
地球の内部は、深くなるほど高温・高圧の環境になります。
また、穴の中に空気があれば空気抵抗が生じますし、地球の自転もボールの運動に影響します。
こうした問題を無視して、地球の中心まで続く安全な穴をつくることはできません。
さらに、空気抵抗などでエネルギーが失われると、ボールは反対側の地表まで到達できなくなります。
往復するたびに動きが小さくなり、理想化したモデルでは最終的に中心付近で静止します。
今回の話は、実際に挑戦するためのものではなく、重力や慣性、エネルギー保存の法則を理解するための思考実験なのです。
📚 もっと楽しむ|『面白くて眠れなくなる物理』
今回のような「もしも」の物理をもっと楽しみたい人におすすめなのが、左巻健男さんの『面白くて眠れなくなる物理』です。
この本には、「地球を貫通する穴にボールを落とすと?」という話題が実際に収録されています。
そのほかにも、透明人間や万有引力、身近な科学遊びなど、思わず誰かに話したくなる物理の不思議が紹介されています。
難しい計算からではなく、身近な疑問をきっかけに物理に親しみたい人におすすめです。
書籍情報
- 書名:『面白くて眠れなくなる物理』
- 著者:左巻健男
- 出版社:PHP研究所
- 発売日:2012年2月17日
- ISBN:9784569802640
まとめ|地球の穴に落ちたら、重力で往復する!
地球の中心を通る穴にボールを落としたら、どうなるのでしょうか?
答えは、空気抵抗や摩擦などがない理想的な条件なら、地球の反対側まで到達するというものです。
今回のポイントを振り返りましょう。
- 地球の中心では重力の合力がゼロになる
- 中心でも慣性によって止まらずに通過する
- 地球の密度が一様なら、反対側まで約42分
- 地球内部の密度分布を考慮した計算では約38分
- 反対側の地表で一瞬止まり、再び落ち始める
「重力は物を下に落とす力」と考えがちですが、地球の内部まで想像すると、まったく違った姿が見えてきます。
こんな不思議な思考実験も、物理の法則を使えば説明できるのです。
🎓 物理をもっと体系的に学びたい方へ
「なぜそうなるのか?」が分かると、物理はもっと面白くなります。
身近な現象の裏には、力・運動・エネルギー・電気など、さまざまな物理の法則が隠れています。
しかし、物理は公式を暗記するだけでは、なかなか理解が深まりません。「なぜその公式が成り立つのか」「どんな場面で使えるのか」を理解することが大切です。
そこでおすすめなのが、スタディサプリの映像授業です。
スタディサプリなら、物理の基礎から順序立てて学ぶことができ、理解しにくい部分は繰り返し視聴して復習できます。
自分のペースで学習できるため、学校の授業でつまずいた高校生はもちろん、大人になってから物理を学び直したい方にもおすすめです。
この記事をきっかけに物理に興味を持ったなら、今度はその仕組みを体系的に学んでみませんか?

