水に沈む氷が存在する!?|普通の氷とは違う「高圧氷」の秘密

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氷を水に入れると、ぷかぷかと浮かびます。

ところが、世の中には水よりも密度が大きく、条件によっては水に沈む氷が存在します。

その正体は、強い圧力のもとで生まれる「高圧氷」です。

同じ水分子からできているのに、なぜ浮く氷と沈む氷があるのでしょうか?

目次

普通の氷が水に浮くのはなぜ?

一般的な氷が水に浮く理由は、氷のほうが液体の水よりも密度が小さいからです。

約0℃・大気圧付近では、氷の密度は約0.917g/cm³、水の密度は約1.00g/cm³です。

氷になると、水分子は水素結合によって、すき間の多い結晶構造をつくります。

そのため、同じ質量でも氷のほうが体積が大きくなり、密度が小さくなるのです。

これは、水が凍ると体積が増える理由でもあります。

水に沈む氷!?「高圧氷」とは

実は、氷の結晶構造は一種類ではありません。

私たちが普段目にする氷は、主に「氷Ih(こおり・ワン・エイチ)」と呼ばれる結晶です。

しかし、水に非常に強い圧力をかけると、分子の並び方が異なる氷ができます。

これが高圧氷です。

例えば「氷VI(氷6)」や「氷VII(氷7)」は、通常の氷よりも分子が密に詰まった構造を持ちます。

そのため、液体の水より密度が大きくなる場合があります。

つまり、氷だから必ず水に浮くとは限らないのです。

ただし、高圧氷は特定の高圧・温度条件で安定する物質です。普通の氷のようにコップの水へ入れて、そのまま沈む様子を観察できるわけではありません。

なぜ圧力をかけると氷が変わる?

ポイントは、圧力によって水分子の並び方が変わることです。

普通の氷Ihは、水素結合によって比較的すき間の多い構造をつくっています。

一方、非常に強い圧力のもとでは、より体積の小さい結晶構造が有利になります。

水分子そのものが別の物質に変わるのではありません。

同じH₂Oでも、分子の配置が変わることで、密度や性質が変化するのです。

このように、同じ化学組成を持ちながら結晶構造が異なる現象は「多形」と呼ばれます。

高圧氷は宇宙にも存在する?

高圧氷は、地球上の実験室だけの話ではありません。

大量の水を持つ惑星や衛星の内部では、深い場所ほど圧力が高くなります。

そのため、氷に覆われた天体の内部に、高圧氷の層が存在する可能性が研究されています。

例えば木星の衛星ガニメデでは、内部の水や氷が何層にも分かれているモデルが考えられています。

氷の性質を理解することは、遠い宇宙の天体内部を探ることにもつながるのです。

宇宙の氷に興味がある方は、土星の衛星エンケラドゥスの氷と海について解説した記事も、あわせて読んでみてください。

まとめ|氷が水に浮くとは限らない!

普通の氷が水に浮くのは、水分子がすき間の多い結晶構造をつくり、液体の水より密度が小さくなるからです。

しかし、非常に強い圧力のもとでは、水分子の並び方が変わり、液体の水より密度が大きい氷ができます。

「氷は水に浮く」は、普段の環境では正しくても、すべての条件で成り立つわけではないのです。

身近な氷にも、まだまだ奥深い科学が隠されています。

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参考・出典

本記事は、以下の書籍・研究機関の公開資料を参考に作成しました。

  1. 北海道大学出版会『新版 氷の科学―水の本質を探る』(前野紀一 著)
    氷の結晶構造、物理的性質、高圧下で形成されるさまざまな氷について。
  2. IAPWS(国際水・蒸気性質協会)|氷の融解・昇華曲線に関する公式資料
    氷Ih・氷III・氷V・氷VI・氷VIIなどの相境界と、圧力・温度の関係について。
  3. NIST(米国国立標準技術研究所)|水と氷の物性に関する公開資料
    水や氷の物理的性質、高圧条件下での研究について。
  4. Nature Materials|高圧下における氷の研究論文(2025年)
    高圧下での氷の形成や構造変化に関する研究について。
  5. U.S. Geological Survey(米国地質調査所)|高圧氷の実験的観測
    高圧条件で形成される氷の実験的観測について。
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