「こぼれ梅」は梅じゃない!?|江戸時代のおやつに隠された美しい名前の由来

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「こぼれ梅」と聞くと、枝からこぼれ落ちた梅の花を想像しませんか?

ところが、食べ物としての「こぼれ梅」には、梅の実も花も使われていません。

その正体は、なんと「みりんの搾り粕(しぼりかす)」。

江戸時代には、お菓子の代わりに食べられることもありました。

では、なぜみりんの搾り粕に、こんなに美しい名前がついたのでしょうか?

目次

「こぼれ梅」の正体は、みりんの搾り粕!

こぼれ梅とは、本みりんを造る過程で生まれる「みりん粕」の別名です。

本みりんは、主にもち米・米麹・焼酎などを原料に造られます。

原料を仕込んで熟成させた後、液体を搾り出したものがみりん。その際に残る白っぽい固形物が、みりん粕です。

見た目は白く、ほろほろとした粒状のかたまり。

もち米由来の甘みが残っているため、そのまま食べたり、料理に利用したりすることができます。

つまり、こぼれ梅は梅のお菓子ではなく、みりん造りから生まれた発酵食品なのです。

なぜ「こぼれ梅」?名前の由来は散った梅の花

「こぼれ梅」という名前の由来は、その見た目にあります。

みりん粕は、白くてほろほろと崩れやすい形をしています。

その姿が、咲きこぼれた梅の花や、散り落ちた花びらのように見えることから、「こぼれ梅」と呼ばれるようになったと説明されています。

実は、「こぼれ梅」という言葉には、もともと「咲き乱れた梅の花」という意味もあります。

『精選版 日本国語大辞典』には、1633年の俳諧集『犬子集(えのこしゅう)』に、花を表す「こぼれ梅」の用例が記録されています。

美しい梅の花を表す言葉が、見た目の似た食べ物にも使われたわけです。

昔の人は、みりんの搾り粕という身近なものにも、季節の花を重ねて名前をつけたのですね。

江戸時代には「こぼれ梅」がおやつだった!?

こぼれ梅は、江戸時代にも知られていました。

食文化史研究家・岡田哲の『たべもの起源事典 日本編』には、江戸時代にみりんの搾り粕を「こぼれ梅」と呼び、菓子の代わりに用いたことが記されています。

さらに、『精選版 日本国語大辞典』には、1797年の洒落本『うかれ草紙』に、みりん粕を意味する「こぼれ梅」の用例が載っています。

つまり、江戸時代には、すでに食べ物としての「こぼれ梅」という呼び名が使われていたことが分かります。

現代では、みりんを料理の調味料として使うことが多いですが、昔はその搾り粕まで食べ物として活用していたのです。

ただし、ここで注意したいことがあります。

こぼれ梅にはアルコールが残っている場合があります。

甘いからといって、子ども向けのお菓子と同じように扱えるわけではありません。

こぼれ梅は今でも食べられる?

こぼれ梅は、現在も一部のみりん蔵や販売店で取り扱われています。

そのまま味わうほか、甘酒風の飲み物や料理の材料、漬物などに利用されることもあります。

特に、昔ながらの本みりん造りを続ける蔵元では、みりん粕も大切な食材として扱われています。

ただし、製品によってアルコールの残存量が異なるため、食べる際には表示や製造元の案内を確認してください。

「こぼれ梅」は、昔の食文化が今も残っている食べ物なのです。

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筑摩書房から2013年に刊行された、ちくま学芸文庫の一冊です。

日本の食べ物や食文化に関する約1,300項目を収録し、身近な料理や食品がどのように生まれ、広まったのかを解説しています。

今回の「こぼれ梅」についても、みりんの項目で江戸時代の利用法に触れています。

「普段食べているものの名前には、どんな由来があるのだろう?」という疑問を楽しみたい方におすすめです。

関連記事|食べ物の名前にも意外な歴史が!

食べ物の名前には、材料や作り方とは違う、意外な由来が隠れていることがあります。

例えば、「沖縄そば」は、なぜ「そば」という名前なのに一般的な日本そばとは違うのでしょうか?

食べ物の名前を調べてみると、言葉だけでなく、その土地の文化や歴史まで見えてきます。

まとめ|「こぼれ梅」は花に見立てた美しい名前

「こぼれ梅」の正体は、みりんを造るときに生まれる「みりん粕」です。

白くほろほろとした姿が、咲きこぼれた梅の花のように見えることから、その名がついたとされています。

江戸時代には菓子の代わりに食べられることもあり、「こぼれ梅」という呼び名が使われていた記録も残っています。

梅が入っていないのに「こぼれ梅」。

そこには、身近な食べ物に花の美しさを重ねた、日本語ならではの表現が隠されていたのです。

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