今から約1,360年前の飛鳥時代、日本ではすでに水を使って時刻を測る時計が造られていました。
その時計を造ったと『日本書紀』に記されているのが、中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)。後の天智天皇です。
では、なぜ時計もない時代に、わざわざ水時計を造る必要があったのでしょうか。
結論からいうと、役人の勤務や朝廷の活動を共通の時刻で管理し、天皇を中心とする国家の仕組みを整えるためだったと考えられます。
ただし、中大兄皇子本人がその目的を明言した史料があるわけではありません。ここでは『日本書紀』の記録と発掘調査から、その理由を考えてみましょう。
飛鳥時代の水時計「漏刻」とは?

飛鳥時代に造られた水時計は、**漏刻(ろうこく)**と呼ばれます。
漏刻は、水槽から流れる水の量や水位の変化を利用して、時刻を測る装置です。
飛鳥資料館に展示されている復元模型では、複数の水槽を管でつなぎ、最後の水槽にたまった水の高さを目盛りで読み取る仕組みが再現されています。
現代の時計のように針が動くわけではありませんが、太陽の位置だけに頼らず、一定の基準で時刻を知ることができました。
中大兄皇子はなぜ水時計を造ったのか?

『日本書紀』の斉明天皇6年(660年)5月の記事には、中大兄皇子が初めて漏刻を造り、人々に時を知らせたと記されています。
その背景にあったと考えられるのが、天皇を中心とした国家づくりです。
645年の乙巳の変以降、中大兄皇子らは政治改革を進めていました。
国の仕組みが整い、朝廷で働く役人が増えていけば、それぞれが別々の感覚で行動するより、共通の時刻を基準にしたほうが仕事を進めやすくなります。
例えば、役人の出勤や勤務、朝廷の儀式などです。
奈良県も、飛鳥水落遺跡の解説で、漏刻と時刻制度の導入が役人の勤務時間管理に関係していたことを指摘しています。
さらに、時刻を定めて人々に知らせることは、天皇の権威を示す意味も持っていたと考えられています。
つまり、水時計は単なる便利な道具ではなく、国を統治するための仕組みの一つだったのです。
この時代の政治改革を物語として知りたい方には、NHKの歴史ドラマ『大化改新』(2005年)もあります。中臣鎌足や中大兄皇子らが活躍する時代背景をつかむのに役立つ作品です。
| 大化改新価格:3300円 (2026/10/9 16:55時点) |
※ドラマは水時計そのものを解説する作品ではなく、史実に脚色を加えた歴史作品です。
日本最初の水時計はどこにあった?

中大兄皇子が造った漏刻の施設跡と考えられているのが、奈良県明日香村の飛鳥水落遺跡(あすかみずおちいせき)です。
発掘調査では、建物の基礎部分に加え、水を流すための銅管や木樋などが見つかりました。
こうした遺構から、水落遺跡は『日本書紀』に記された漏刻台の跡である可能性が高いと考えられています。
水時計の仕組みをもっと詳しく知りたい方には、近くの飛鳥資料館がおすすめです。
館内では漏刻の原寸大復元模型や水落遺跡の出土品・模型が展示されており、古代の人々がどのように時刻を測っていたのかを学べます。
実際の飛鳥水落遺跡も見学できるため、資料館とあわせて訪れると理解が深まるでしょう。
6月10日の「時の記念日」との関係は?

実は、毎年6月10日の「時の記念日」も、この水時計と関係しています。
『日本書紀』には、天智天皇10年(671年)4月25日に漏刻を設置し、鐘や太鼓で時刻を知らせたという記録があります。
この日を現在の暦に換算した6月10日が、1920年に「時の記念日」として制定されました。
ここで注意したいのは、660年は中大兄皇子が初めて漏刻を造ったとされる年、671年は天智天皇として新たに漏刻を設置し、鐘や太鼓で時を知らせたと記録される年という違いです。
まとめ|水時計は国家づくりの道具だった
飛鳥時代に水時計が必要とされたのは、単に時刻を知るためだけではありません。
役人の勤務や朝廷の活動に共通の時間を取り入れ、国家を運営する仕組みを整える意味があったと考えられます。
中大兄皇子が造ったとされる漏刻は、日本で時刻を公的に管理する仕組みが発展していくうえで、重要な一歩だったのです。
🎓 日本史をもっと体系的に学ぶ
歴史は、人物や出来事を一つずつ暗記するだけではありません。「なぜその事件が起きたのか」「その出来事が次の時代にどうつながったのか」まで理解できると、歴史上の人物の行動や時代の変化が、ひとつの大きな物語として見えてきます。
そんな日本史の学び直しにおすすめなのが、スタディサプリです。
スタディサプリの魅力は、経験豊富な講師によるわかりやすい映像授業で、日本史を基礎から体系的に学べること。
- 時代の流れがつかめる: バラバラに覚えていた人物や事件を、背景や因果関係と結びつけながら理解できます。
- 自分のペースで学べる: 気になる時代から学び始めたり、理解しにくい部分を繰り返し視聴したりできます。
- 大人の学び直しにもぴったり: 学校で習った日本史を復習したい方も、ニュースや歴史ドラマをもっと深く楽しみたい方も、自分の興味に合わせて学習を進められます。
「歴史上の出来事を知っている」から「歴史の流れを説明できる」へ。
この記事で生まれた興味をきっかけに、スタディサプリで日本史の面白さをさらに広げてみませんか?

