古墳の周囲にずらりと並ぶ埴輪(はにわ)。
人や馬の形をしたものが有名ですが、実は古墳時代には、円筒形の埴輪も大量に作られていました。
では、なぜこれほど多くの埴輪が必要だったのでしょうか。
結論からいうと、埴輪は古墳を飾り、そこに葬られた有力者の権威を示す役割を持っていたためです。
そして、大量の埴輪を作るために、専門の職人が働く大規模な生産施設も存在していました。
その実態を教えてくれるのが、大阪府高槻市にある約1600年前の「ハニワ工場」の跡です。
埴輪はなぜ大量に必要だった?

埴輪は、古墳の上や周囲に並べられた土製品です。
代表的なものには、次のような種類があります。
- 円筒埴輪:筒のような形をした埴輪
- 形象埴輪:人物・動物・家・道具などを表した埴輪
特に大きな古墳では、数多くの埴輪が並べられました。
埴輪には、古墳の空間を区切ったり、儀式の様子を表現したりする役割があったと考えられています。
また、立派な古墳と多彩な埴輪を造ることは、それだけの人手や資源を動かせる有力者の力を示すことにもつながりました。
つまり、埴輪は単なる飾りではなく、古墳に葬られた人物の権威を表す重要な存在だったのです。
1600年前の「ハニワ工場」とは?

大量生産の仕組みを知る手がかりとなるのが、大阪府高槻市の新池遺跡(しんいけいせき)です。
新池遺跡では、発掘調査によって次の施設が確認されています。
- 埴輪を作る工房跡:3棟
- 埴輪を焼く窯跡:18基
- 埴輪作りに携わった人々の集落跡
この遺跡では、5世紀中頃から6世紀中頃にかけて、およそ100年間、埴輪が生産されていたと考えられています。
驚くのは、工房だけでなく、埴輪を焼く窯や職人たちの生活の場まで確認されていることです。
新池遺跡は、古墳時代に埴輪が組織的に作られていたことを示す、日本最大級の生産遺跡の一つなのです。
大量の埴輪はどこへ運ばれた?

新池遺跡で作られた埴輪は、周辺の有力者の古墳へ供給されていました。
代表的なのが、太田茶臼山古墳や今城塚古墳です。
今城塚古墳は6世紀前半に築かれた巨大な前方後円墳で、人物や動物、家などを表した多数の埴輪が見つかっています。
このように、生産施設で埴輪を作り、必要とする古墳へ供給する仕組みが存在していました。
そこから見えてくるのは、職人を集め、材料を用意し、製品を運ぶことができる古墳時代の社会の組織力です。
埴輪の大量生産は、当時の有力者が大勢の人々を動かせる力を持っていたことを物語っています。
埴輪から古墳時代の社会をもっと知るには?
埴輪の役割や生産の仕組みをさらに知りたい方には、考古学者・若狭徹氏の著書『埴輪は語る』(ちくま新書)がおすすめです。
人物や動物の埴輪が何を表していたのか、そして大量生産を支えた職人たちの組織とはどのようなものだったのか。
埴輪を通して、古墳時代の社会を読み解く一冊です。
今城塚古代歴史館で「ハニワ工場」の企画展を開催
実物の埴輪を見て学びたい方には、大阪府高槻市の今城塚古代歴史館もおすすめです。
同館では、2026年10月17日から企画展「ハニワのふるさと-新池遺跡-」が開催されます。
新池遺跡から出土した円筒埴輪や朝顔形埴輪、供給先の古墳から出土した埴輪などを通して、約1600年前の埴輪生産の様子を紹介します。
企画展の概要
- 開催期間:2026年10月17日(土)~2027年2月14日(日)
- 会場:高槻市立今城塚古代歴史館(大阪府高槻市)
- 開館時間:10:00~17:00(入館16:30まで)
- 観覧料:無料
- 休館日:月曜日(祝日は開館)、祝日の翌平日、年末年始
隣接する今城塚古墳公園では、多数の形象埴輪を再現した埴輪祭祀場も見ることができます。
まとめ|埴輪の大量生産から見える古墳時代

埴輪が大量に作られたのは、古墳を飾り、有力者の権威を示すためでした。
そして、その需要を支えていたのが、新池遺跡のような大規模な生産施設です。
工房、窯、職人たちの集落がそろった「ハニワ工場」は、古墳時代にすでに組織的なものづくりが行われていたことを教えてくれます。
埴輪は、古代の人々の技術だけでなく、社会の仕組みまで伝えてくれる歴史資料なのです。
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