江戸時代の武士はなぜ借金だらけ!?|給料は米、出世しても苦しい家計の秘密

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江戸時代の武士といえば、立派な屋敷に住み、刀を差して堂々と歩く姿を想像するかもしれません。

ところが、実際には借金に苦しむ武士も少なくありませんでした。

しかも驚くことに、出世して給料が増えても、かえって生活が苦しくなることさえあったのです。

なぜ、社会的地位の高い武士たちが借金を抱えていたのでしょうか?

その秘密は、江戸時代特有の給料制度と、武士の身分に伴う出費にありました。

目次

武士が借金だらけになった3つの理由

結論からいうと、江戸時代の武士が借金に苦しんだ主な理由は次の3つです。

  1. 給料が米を基準としていたため、現金収入が米価に左右された
  2. 貨幣経済が発達し、現金で支払う出費が増えた
  3. 武士としての体面や身分を維持するために、お金がかかった

武士の収入制度は、領地から年貢を得る「知行取」と、米を支給される「蔵米取」などに分かれていました。

特に幕府の旗本・御家人のうち蔵米取の武士は、支給された米を現金に換えて生活費に充てていました。

つまり、米を基準に収入を得ながら、お金を使って生活するという仕組みだったのです。

理由① 給料が米だから、米の値段で収入が変わる!

江戸時代の武士の給料を考えるうえで重要なのが「石高(こくだか)」です。

石高は米の生産量などを表す単位で、1石は10斗、約180リットルに相当します。

武士の俸禄にも「石」や「俵」といった米を基準とする単位が用いられました。

しかし、生活に必要なのは米だけではありません。

衣服を買うにも、道具をそろえるにも、さまざまな場面で現金が必要でした。

そこで武士は、受け取った米を売って現金に換えていたのです。

米の値段が下がるとどうなる?

例えば、ある武士が100俵の米を受け取り、それを売って生活費に充てるとします。

米1俵の価格100俵の売却額
1両100両
0.8両80両
0.6両60両

※仕組みを説明するための仮定の数字です。実際の米価や俸禄の手取り額ではありません。

受け取る米の量が変わらなくても、米価が下がれば現金収入は減ってしまいます。

一方、生活に必要な商品の値段が同じように下がるとは限りません。

これでは、家計が苦しくなるのも当然です。

武士の給料は米を基準としていたため、米価の変動が生活に直接影響していたのです。

理由② 貨幣経済が発達して、武士の生活が苦しくなった!

江戸時代には、都市の発展とともに商業が盛んになり、貨幣を使った取引が広がっていきました。

江戸や大坂などでは、商人たちが活発に商品を売買し、現金を使う経済が発展していきます。

ところが、武士の収入制度は米を基準としたままでした。

商人が貨幣経済の発展によって富を蓄える一方、武士は米を現金化しなければ生活できません。

こうした仕組みの違いが、武士の家計を圧迫する一因になったのです。

武士にお金を貸した「札差」とは?

ここで登場するのが、札差(ふださし)と呼ばれる商人です。

札差は、主に江戸幕府の旗本や御家人に代わって蔵米を受け取り、売却して現金に換える仕事をしていました。

しかし、札差の役割はそれだけではありません。

武士が生活費に困ると、将来受け取る米を担保にお金を貸すこともありました。

つまり、武士にとって札差は、給料の現金化を任せる相手であると同時に、お金の借入先でもあったのです。

借金を返すために次の給料を使い、それでも足りなければ再び借りる。

こうして、借金から抜け出せなくなる武士もいました。

理由③ 出世すると、むしろ出費が増えた!?

現代なら、出世して給料が増えることは喜ばしい出来事でしょう。

ところが、江戸時代の武士社会では、必ずしもそうとは限りませんでした。

なぜなら、身分や役職が高くなると、それにふさわしい生活や振る舞いが求められたからです。

例えば、立場によっては次のような負担が増えました。

  • 家来や奉公人を雇う費用
  • 武家としての儀礼や交際にかかる費用
  • 衣服や屋敷の維持費
  • 冠婚葬祭などの支出

もちろん、すべての武士が同じ負担を抱えていたわけではありません。

それでも、収入が増えた分だけ自由に使えるお金が増えるとは限らなかったのです。

出世したのに赤字になる家計

例えば、出世前の年間収入が100両、支出が90両だったとします。

出世して収入が120両になっても、身分に伴う支出が130両に増えれば、家計は赤字になります。

出世前出世後
年間収入100両120両
年間支出90両130両
収支+10両−10両

※江戸時代の家計構造を理解するための仮定の数字です。

給料が増えたのに生活は苦しくなる。

現代でも起こり得る話ですが、江戸時代の武士の場合は、身分制度や社会的な体面が家計と深く結びついていました。

武士は社会的地位が高くても、必ずしも裕福だったわけではありません。

では、同じ江戸時代に暮らしていた大工や商人、奉公人などの庶民は、どれくらい稼いでいたのでしょうか?

実は、大工の年収が現代換算で800万円相当と紹介されることもあるなど、職業によって収入には大きな違いがありました。

詳しくは、下記の関連記事で解説しています。

借金に苦しんだ武士は、どうやって生活を立て直した?

もちろん、すべての武士が借金を抱えていたわけではありません。

しかし、家計が苦しくなった武士の中には、生活費を切り詰めたり、家財を処分したりして、支出を減らそうとする人々もいました。

その実態を知るうえで興味深いのが、加賀藩の武士・猪山家(いのやまけ)に残された家計記録です。

猪山家は代々、藩の会計を担当する御算用者(ごさんようもの)を務めていました。

その家計記録を研究した歴史学者・磯田道史氏の著書が『武士の家計簿』です。

記録からは、武士の暮らしが決して優雅なものばかりではなく、収入と支出のやりくりに苦労していたことがうかがえます。

そして、この研究を原作として制作されたのが、映画『武士の家計簿』なのです。

🎬 おすすめ映像作品 映画『武士の家計簿』で、武士の本当の暮らしを知ろう!

武士の家計簿 [ 堺雅人 ]

武士の家計簿

2010年公開/監督:森田芳光

主演:堺雅人、仲間由紀恵

原作:磯田道史『武士の家計簿』

映画『武士の家計簿』は、加賀藩の御算用者として働く猪山直之と、その家族の暮らしを描いた作品です。

直之は、そろばんを使った計算を得意とする真面目な武士。

しかし、猪山家の家計は多額の借金によって苦しくなっていました。

そこで直之は、家財を売却し、徹底した倹約によって家計を立て直そうとします。

この映画の魅力は、戦いや剣術ではなく、お金のやりくりという視点から江戸時代の武士を描いていることです。

武士にも生活があり、家族があり、家計の悩みがあった。

そんな当たり前でありながら、時代劇ではあまり描かれない一面を知ることができます。

なお、映画は史料を基にした作品ですが、登場人物の会話や出来事には物語としての脚色も含まれています。

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※ドラマ・映画には創作・脚色が含まれます。史実の確認には歴史資料を参照してください。

史実をさらに詳しく知りたい方には、原作である磯田道史氏の『武士の家計簿―「加賀藩御算用者」の幕末維新―』もおすすめです。

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まとめ|武士が貧しかったのは、給料と生活の仕組みに理由があった!

江戸時代の武士が借金に苦しんだ背景には、次の3つの理由がありました。

  1. 給料が米を基準としていたため、米価によって現金収入が変わった。
  2. 貨幣経済が発達し、生活に必要な現金支出が増えた。
  3. 出世や身分の維持に伴って、支出が増えることがあった。

江戸時代の武士は、社会的な地位が高くても、経済的に豊かとは限りませんでした。

刀を差して歩く立派な姿の裏側で、毎日の家計に頭を悩ませていた武士たち。

そんな武士の暮らしを知ると、江戸時代の歴史がこれまでとは少し違って見えてくるのではないでしょうか。

江戸時代の暮らしをもっと知ろう!

武士にとって、身分や領地を守ることは生活そのものに関わる重要な問題でした。

実は、私たちが普段使う「一生懸命」という言葉も、もともとは武士が領地を命がけで守る「一所懸命」に由来しています。

詳しくは、下記の関連記事で解説しています。

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