人間の脳には、左側と右側で働き方に違いがあることが知られています。
では、魚の脳にも同じような左右の違いがあるのでしょうか?
答えは「ある」です。魚の脳でも、左右で遺伝子の働き方が異なることが確認されています。
2026年10月、北海道大学などの研究グループは、4種類の魚を比較し、脳の左右で共通した違いを示す5つの候補遺伝子を発見したと発表しました。
この研究は、魚だけでなく、私たち人間を含む脊椎動物の脳が、なぜ左右で異なる働きを持つのかを理解する手がかりになると期待されています。
魚にも左脳と右脳の違いがある?

魚の脳にも、左側と右側で違いがあります。
こうした違いを、科学では「脳の左右差」と呼びます。
例えば、人間では言語や空間認知などに関わる脳の働きに左右差が見られます。
魚でも脳の一部に左右差があることは知られていましたが、左右で働く遺伝子の違いが、異なる魚の種類にどれほど共通しているかは、十分に分かっていませんでした。
そこで今回の研究では、魚の脳を左右に分けて、遺伝子の働き方を詳しく調べました。
ただし、左脳は論理的、右脳は感覚的といった単純な分け方が、魚にも当てはまると判明したわけではありません。
今回明らかになったのは、脳の左右で一部の遺伝子の働き方が異なるということです。
研究で比較した4種類の魚とは?

研究対象となったのは、次の4種類です。
| 魚の種類 | 特徴 |
|---|---|
| ゼブラフィッシュ | しま模様が特徴で、研究によく使われる魚 |
| メダカ | 日本でも身近な小型の淡水魚 |
| イトヨ | トゲウオの仲間で、行動研究にも使われる魚 |
| シクリッド | 多様な種類が存在し、進化研究でも注目される魚 |
これらは、進化の過程で約1億〜3億年前に分かれた系統に属しています。
研究グループは、それぞれの成魚の脳から、終脳と後脳を取り出して左右に分けました。
そして、どの遺伝子がどの程度働いているかを比較しました。
進化的に離れた魚に共通する左右差が見つかれば、脳の左右差が古くから受け継がれてきた可能性を考えられるからです。
4種類の魚で見つかった「5つの候補遺伝子」とは?

今回の研究では、4種類の魚を比較した結果、種を超えて共通した方向の左右差を示す5つの候補遺伝子が特定されました。
ここで重要なのは、遺伝子そのものが左脳と右脳で違うという意味ではないことです。
同じ遺伝子でも、脳の左側と右側で「どのくらい働いているか」が違うのです。
この働きの程度を「遺伝子発現量」と呼びます。
特に注目されたのが、次の2つの遺伝子です。
| 遺伝子 | 関係する働き |
|---|---|
| ddc | 神経伝達物質の合成 |
| ntn1b | 神経回路の形成 |
この2つは、3種類の魚で後脳の左側に多く発現し、残る1種類でも同じ傾向が見られました。
つまり、魚の種類が違っても、脳の左右で似た遺伝子の働き方が見つかったのです。
メダカの脳では何が分かった?

研究グループは、遺伝子の働き方だけでなく、メダカの脳の細胞も詳しく調べました。
注目したのは、後脳にある「縫線核(ほうせんかく)」という領域です。
縫線核は、運動や感情、ストレスへの反応などの調節に関わる神経核として知られています。
調査の結果、メダカでは、ddcという遺伝子を発現する細胞が、縫線核の右側より左側に多く存在していました。
これは、遺伝子の発現量に見られた左右差が、実際の細胞の分布にも表れていることを示す発見です。
ただし、この違いによってメダカの行動が具体的にどう変わるのかまでは、今回の研究だけでは分かりません。
なぜ魚の脳の左右差を調べることが重要なの?
脳の左右差は、人間だけの特徴ではありません。
今回、進化的に離れた魚の間でも共通した遺伝子の働き方が見つかったことから、脳の左右差を生み出す仕組みの一部が、長い進化の歴史の中で受け継がれてきた可能性が示されました。
今後は、見つかった遺伝子が脳の左右差をつくるうえで、実際にどのような役割を果たしているのかを調べる必要があります。
今回の成果は、魚の脳の研究であると同時に、脊椎動物の脳の進化を理解するための一歩でもあるのです。
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まとめ|魚の脳にも共通する左右差が見つかった

2026年10月に発表された研究では、ゼブラフィッシュ、メダカ、イトヨ、シクリッドの4種類を比較し、脳の左右で共通した発現量の違いを示す5つの候補遺伝子が見つかりました。
さらにメダカでは、ddcを発現する細胞が、縫線核の左側に多いことも確認されました。
今回の発見は、魚の脳にも左右差があり、その仕組みの一部が進化の過程で受け継がれてきた可能性を示しています。
魚の脳の左右差を調べることは、私たち人間の脳の進化を理解することにもつながるのです。
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