日本だけでなく、世界中で愛されている柴犬。
実は、現在の柴犬の血統を父方へさかのぼると、島根県にいた1匹の犬「石号(いしごう)」に行き着くことをご存じでしょうか?
石号は、1930年に生まれた猟犬です。
しかし、ここで不思議なのは、柴犬が石号よりもずっと昔から日本に存在していたこと。
なぜ、たった1匹の猟犬が、現代の柴犬の祖先として知られるようになったのでしょうか?
柴犬の祖先は本当にたった1匹なの?
結論からいうと、現在の日本犬保存会に登録されている柴犬は、父方の血統をたどると石号に行き着きます。
これは日本犬保存会が公式に説明している事実です。
ただし、「すべての柴犬が石号1匹だけから生まれた」という意味ではありません。
もともと日本には、地域ごとに特色の異なる小型の日本犬が存在していました。
例えば、信州柴、山陰柴、美濃柴などです。
現在の柴犬は、こうした各地の犬たちをもとに保存・繁殖が進められてきました。
その過程で、石号の子孫が特に大きな役割を果たしたのです。
つまり石号は、柴犬という犬種を最初につくった犬ではなく、現代の柴犬の父系血統を代表する祖犬なのです。
石号とは?|島根県で生まれた1匹の猟犬

石号は、1930年11月2日、現在の島根県益田市美都町にあたる地域で生まれました。
犬種は、島根県西部の石見地方にいた在来犬「石州犬(せきしゅうけん)」です。
当時、石号は地元の猟師・下山信市さんに飼われ、猟犬として暮らしていました。
転機が訪れたのは1936年。
優れた日本犬を探していた中村鶴吉(なかむら・つるきち)が石号を見いだし、東京へ連れて行ったのです。
中村は島根県出身で、東京で歯科医を営みながら日本犬の保存活動にも関わっていました。
石号は同年、日本犬保存会に血統登録され、展覧会でも高く評価されました。
もし石号が故郷の島根で暮らし続けていたら、現代の柴犬の歴史は違っていたかもしれません。
なぜ石号の血統だけが大きく広がったのか?

石号が柴犬の歴史に残った理由は、優れた子孫が生まれ、その血統が戦後まで受け継がれたことにあります。
その流れを見てみましょう。
① 石号から「アカ号」が生まれる
石号と四国産の雌犬「コロ号」の間に生まれたのが、雄犬の「アカ号」です。
アカ号もまた、柴犬の繁殖に重要な役割を果たしました。
② アカ号の子孫から「中号」が誕生
アカ号の血統は、鳥取県など各地の犬との交配を経て受け継がれます。
そして1948年、石号のひ孫にあたる「中号(なかごう)」が誕生しました。
③ 中号が戦後の柴犬を支えた
中号は、優れた子孫を数多く残したことで知られています。
そのため、「戦後柴犬中興の祖犬」と呼ばれています。
血統の流れを簡単にすると、次のようになります。
石号 → アカ号 → アカ号の子世代 → 中号 → 現代の柴犬へ
もちろん、この間には多くの雌犬や別の系統の犬たちも関わっています。
石号だけで柴犬の歴史がつくられたわけではありません。
石号の血統はなぜ途絶えなかった?

当時の日本犬にとって、大きな試練となったのが第二次世界大戦と感染症の流行でした。
戦争中から戦後にかけて、多くの日本犬が失われ、保存活動も停滞しました。
そうした時代を経ても、石号の子孫は生き残り、繁殖を続けることができました。
石号が「強運の犬」と呼ばれるのは、このためです。
ただし、血統が残ったのは運だけではありません。
石号を見いだした人、子孫を大切に育てた人、そして日本犬の保存に取り組んだ人々の努力も、現在の柴犬につながっています。
石号が生まれた島根県には、今も記念館がある
石号が暮らした島根県益田市美都町には、現在もその歴史を伝える場所があります。
それが「石号記念館」です。
石号が育った場所に、当時の写真をもとに制作された石像や、血統書などの資料が展示されています。
日本犬の歴史をたどると、地方で暮らしていた1匹の猟犬と、その血統を守ろうとした人々の物語が見えてきます。
柴犬好きの人にとっては、まさにルーツを訪ねる場所といえるでしょう。
📚 もっと楽しむ|絵本『石号ものがたり』
今回の石号の歴史に興味を持った人へ、おすすめしたいのが『石号ものがたり』です。
この絵本は、現代の柴犬の祖犬となった石号の実話をもとに、その歩みを描いた作品です。
石号がどのような犬だったのか、なぜ柴犬の歴史に名を残したのか。
歴史の解説を読むだけでは伝わりにくい物語を、絵本として親しめます。
こんな人におすすめです。
- 柴犬が好きで、そのルーツをもっと知りたい人
- 石号の物語を家族や子どもと楽しみたい人
- 日本犬を守ってきた人々の歴史に興味がある人
書籍情報
- 書名:『石号ものがたり』
- 文:かわべまゆみ
- 絵:もりおかあや
- 出版社:ニコモ
- 発売:2021年9月
- ページ数:32ページ
- ISBN:9784910593654
まとめ|石号は現代の柴犬につながる特別な祖犬
柴犬のルーツとして知られる石号は、1930年に島根県で生まれた石州犬でした。
1936年に東京へ渡り、その子孫であるアカ号や中号を通じて、現代の柴犬の発展に大きく貢献しました。
今回のポイントは3つです。
- 石号は、現代の柴犬の父系血統を代表する祖犬
- 柴犬自体は石号以前から日本各地に存在していた
- 石号の子孫と、日本犬を守った人々の努力が現在の柴犬につながっている
私たちが普段見かける柴犬の歴史をたどると、約90年前の島根県で暮らしていた1匹の猟犬に行き着く。
そう考えると、いつもの柴犬の姿が少し違って見えてくるかもしれません。
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