奈良の正倉院には、「虹龍(こうりゅう)」という不思議な宝物が伝わっています。
龍という名前ですが、その正体は伝説上の生き物ではありません。
近年の研究で、虹龍の一つはニホンテンのミイラと判明しました。
では、なぜ「龍」と呼ばれたのでしょうか。
室町時代の記録と、現代の科学調査から分かったことを解説します。
正倉院の「虹龍」とは?正体はニホンテンのミイラ

虹龍は、奈良の正倉院に伝わる動物のミイラです。
2026年の第78回正倉院展に出品される虹龍は、長さ約23cm。
体の形、指の数、歯の特徴などを調べた結果、イタチ科の動物「ニホンテン」と判明しました。
さらに、放射性炭素年代測定によって、このテンが生きていた時期は11世紀中頃から12世紀中頃と推定されています。
奈良時代から伝わる正倉院に、平安時代の動物のミイラが残されていたという点も興味深いところです。
なぜ龍と呼ばれた?1429年の足利義教の記録

虹龍に関係する有名な記録が残っているのは、室町時代の1429年です。
室町幕府6代将軍・足利義教(あしかがよしのり)が、正倉院に保管されていた香木「蘭奢待(らんじゃたい)」を切り取った際、「竜日干(りゅうのひぼし)」を見たという記録があります。
これは、龍を干したものと考えられていた品を指す言葉です。
さらに、正倉院には次のような言い伝えもありました。
「この龍がいるため、正倉院の扉を開くと雨が降る」
当時、人々がその品を不思議な存在として捉えていたことがうかがえます。
ただし、現在の虹龍が記録にある「竜日干」と同じものなのか、なぜ龍と見なされたのかは、確実には分かっていません。
ニホンテンはなぜ正倉院でミイラになった?

虹龍が正倉院に残された経緯には、大きく2つの可能性があります。
| 可能性 | 内容 |
|---|---|
| 自然にミイラ化した | テンが宝庫に入り、そのまま乾燥した |
| 人が持ち込んだ | ミイラになった動物を龍に見立てて納めた |
調査では、明らかな人為的加工の痕跡は確認されていません。
しかし、加工の痕跡がないことだけで、自然に入り込んだと断定することもできません。
正体はニホンテンと分かっても、なぜ正倉院に残されたのかは謎のままなのです。
2026年の正倉院展で「虹龍」が公開
虹龍は、2026年の第78回正倉院展で展示される予定です。
- 会場:奈良国立博物館
- 会期:2026年10月24日(土)〜11月9日(月)
- 展示品:虹龍(南倉174)
前回の出陳は2008年です。
約18年ぶりの展示となる今回は、ニホンテンと判明した研究成果にも注目が集まります。
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まとめ|龍の正体は分かっても、由来は謎のまま
正倉院の虹龍は、長い間「龍」として伝えられてきた不思議な宝物です。
1429年には、足利義教が「竜日干」を見たという記録も残されています。
現代の科学調査によって正体はニホンテンと判明しましたが、正倉院に残された理由はまだ分かっていません。
虹龍は、昔の人々の見方と現代の科学の違いを教えてくれる宝物なのです。
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